劇団四季の「コーラスライン」を観てきた。
去年観た「ライオンキング」は、
日常を離れた異世界の中に身を置くことができ、
笑いあり涙ありの映画以上に楽しめるミュージカルだった。
今回も期待して観に出かけたが、
「コーラスライン」は全く違うものだった。
ブロードウェイでは、新作ミュージカルの
コーラスダンサーを選ぶオーディションが行われている。
最終選考に残った人々の人生が、
オーディションを通して浮かび上がってくる。
1人1人が演出家に問われるままに自分の人生を語り、
自分の境遇や悩みを歌や踊りにして表現していく。
劇が進むにつれて同じ夢を求める者同士に
仲間意識が生まれていく。
踊りが素晴らしく、全員がそろっての踊りには何度も感動。
劇場の大きさもちょうどよくて、まさにオーディションが
目の前で行われているかのような臨場感があった。
だが、観ている最中も観終わった後も、
スッキリとした気分にならない。
それは登場人物が抱えている悩みがリアルで、
観ている僕も彼らの悩みを自分の人生に置き換えて、
一緒に苦しんでしまったからだという思いに至る。
思い描いた通りに夢が実現するわけじゃない。
夢を追い続けていれば、映画やドラマにありがちな
救いのあるハッピーエンドが、
現実にも必ずしも訪れるというわけじゃない。
踊りや歌の素晴らしさよりも、
僕は現実的なストーリーの方に引き寄せられてしまった・・・。
「もし、今日を最後に踊れなくなったらどうする?」
と演出家は問う。
それに対して希望のある楽観的な答えを用意してはくれない
リアルなミュージカルだった。